西洋芸術 Updated:2010/07/10)
  • 西洋芸術に関する参考書
    • ベネチア
      • [2010/7/10]John Berendt(2005)"The City of Falling Angels"(邦訳『ヴェネチアが燃えた日:世界一怪しい人々』高見浩訳、光文社、2010年):ヴェネチアのフェニーチェと呼ばれるオペラハウスの出火を軸に、この街の現在に生きる人々、それには、ペギー・グッゲンハイムのようにこの街に魅せられた米国人も含まれる、のある意味、怪しい行動を通し、この街の空気を伝える。ミステリー仕立てにもなっており、読ませる。
    • パリ・フランス、エコール・ドゥ・パリ:
      • ★★★[2007/10/30]Sue Prideaux(2005)”Edvard Munch: Behind the Scream ”Yale University Press(木下哲夫訳『ムンク伝』岩波書店 2007年):<<叫び>>などで作品が日本でもよく知られる、ムンクの伝記。作者は美術史の専門家であるとともに、小説家。さらに家系にムンクの講演者が含まれ、著者もノルウェー語に担当で、ムンクが残した膨大な日記と手紙も駆使し、ムンクの生涯の内面と作品との関係に肉薄している。貧しい家庭と厳格な父、やがてノルウェーの退廃的なボヘミアンとしての行動。長い間の困窮の中で創作活動を続け、パリ、ドイツで、マラルメやニーチェなどとも触れていく。膨大な読書家であり科学的思考にも詳しかったムンクは絵を通じで、人間の内面を暴こうとする。祖国との愛憎まみえた複雑な感情。やがて、ドイツの富裕層から認められ、成功と祖国での名声につながるが、ナチドイツでは退廃芸術とされ、ムンクの古くからの支持者も抑圧され、啓蒙主義の尊敬すべき国の変貌に悲しむ。最後はドイツ占領下での孤高の死。多くの女性と交流を持ったが、生涯独身であった。重いが、著者の筆力がぐんぐん読ませる書である。
      • (2006/8/19)『ジョイスのパリ時代;『フィネガンズ・ウェイク』と女性たち』宮田恭子、みすず書房、2006年6月、311頁:アイルランド出身の作家、ジョイスのパリ時代と、特に、その薄幸の娘、ルチアに焦点を当てたもの。天才である父親の圧迫と、不安定な言語環境(ルチアはイタリア語の光から来た名前でトリエステでも育っている)、統合失調症から来る不安定な情緒を持った、この、芸術家の才能の片鱗は持つ娘を、書簡なども含め、丹念に原資料で追っている。「芸術家の多くには、不幸な人生」を実感させる書である。
      • ★★『フランス芸術紀行(Voyage Artistique en France)』饗庭孝男、NHK出版,2004年、239ページ: フランス文学者の著者の主にロマネスクの教会建築・芸術を中心としたフランス地方へのたびの遍歴からまとめたもの。NHKフランス語講座の中の連載として掲載されたもの(2005/2/27)。
      • 『パリ1920年代:シュルレアリスムからアール・デコまで』渡辺淳、、丸善ライブラリー、1997年5月、224ページ:アヴァンギャルドがロシアで盛んな同じ頃パリではその後の20世紀の芸術を規定する種種の流れが表れていた。人間と人間の交流が刺激を生み創造的行為の結果として芸術が生まれるなら、20年代のパリは両世界大戦の間の不思議な時間として、歴史的な密度で創造力が花咲いていた。すばらしい力作だが、著者の文章は一つ一つが長すぎ、主語などの基本的構成要素が非常に掴みにくい。丸善社の担当編集者は日本語をもっと勉強すべきだ。(2003/4/10)。
    • ★★『ギリシアの美術』澤柳大五郎、岩波新書E62,1964年、261ページ:今わなき美術史家の著者が3ヵ月半に渡りギリシアに滞在しギリシアの美術を体感し、かかれた書。多くの写真からギリシアの美が俯瞰される(2004/10/22)。
    • 『物語古代エジプト人』松本弥、文春新書093、2000年:エジプトオタクの著者が古代エジプトの社会、文化を一冊にまとめた。
    • ★★★『西洋画人列伝』 中沢ヒデキ、NTT出版2001年4月、295ページ: 千葉大医学部出身の変り種美術家中沢ヒデキの西洋画人の列伝。7つの区分ごとに大胆な絵画理論を展開し、なんと画家を一人称で語ってしまうという展開。単なる客観的な、学術的紹介ではなく、美術かとして悩んでいる著者自身が自己を投影していくという展開。2004年春の現代美術館のアニュアルに付随して、この現代美術版が出るとか。楽しみである。(2004/1/30)
    • ロシア・社会主義リアリズム:
      • ★(2003/4/8)『ロシア・アヴァンギャルド』亀山郁夫、岩波新書、1996年6月、246ページ:: 20世紀初頭の約40年間のロシア・ソヴィエトのいわゆるアヴァン・ギャルドといわれる芸術事情を俯瞰している。アヴァン・ギャルドとは軍事用語で「主力軍への敵の急襲を封じるために前線に送られる軍事力」という意味から転じ、社会的グループなどの先進的、指導的部分を意味するようになった。ロシア・アヴァンギャルドは革命以前から、時代の変革への鬱積した期待感に、スラヴ神秘主義的背景が加味された、強烈なエネルギーの蓄積がなされていた。それがロシア革命で開放され、その後権力との(一時的ではあるが)利害の一致から強い政治的力を持ち、理論的必然とするマルクス主義的な進歩的歴史観と、折からの相対理論、航空機、ロケットの発明に象徴される人類の発展に対する強烈なイメージにより、極度に抽象的、思想的芸術へと昇華していった。マレーヴィッチ、フィローノフ、シャガール、カンディンスキーなどの美術、ストラヴィンスキー、ショスタコーヴィチの音楽、エイゼンシテインの映画。この極端な高揚が、過度に教条主義的な派閥間の抗争、スターリンによる粛清という極端な抑圧・迎合へと、人類史上まれな振幅を見せる。著者の亀山氏はロシア文化の専門家としペレストロイカ以前から積極的な現地訪問をしている。
      • ★★(2006/3/25)『大審問官スターリン』亀山郁夫、小学館、2006年2月、319頁:スターリン時代の圧倒的に非対称なスターリンと芸術家の関係を、関係者の性格、感情に肉薄することにより描き出している。トロツキーの例を挙げるまでも無く、たとえ国外に脱出しても、ねずみをいたぶるように残忍で気まぐれなスターリンからは逃げて行くことは出来ない。ある意味では、人類史上まれに見るこの圧迫感を迫真に描いている。対象が主に文学と音楽になっているため、惜しむらくは美術分野への言及が皆無であることである。
  • その他
    • 放送大学の『芸術の理論と歴史('02)』も参考になる。
  • 芸術家個人
    • Stan Lauryssens(2007)"Dali & I: The Surreal Story"(楡井浩一訳『贋作王ダリ:シュールでスキャンダラスな天才画家の真実』アスペクト、2008年):これはかなりヤバい本だ。ご存知、シュールレアリズムの帝王、奇行で知られる変わり者。日本でもファンが多いこの画家のある意味全貌を暴いた本だ。 主人公(著者)は、チーズ工場で働いていたところ、ベルギーのインチキ雑誌で仕事を得る。これは、あってもいないセレブのインタビュー記事をでっちあげる仕事だが、そこでのダリのインタビューが、インチキ投資顧問会社の社長の目にとまり、ダリの絵を売るはめに。 絵を詐欺まがいの手法で、これも詐欺まがいの手法で大金をえ、それをきれいにしたい金持ちに、手八丁、口八丁で売りサバイでいるうちに、ダリの贋作の存在に気がつき、確信犯的に自分でもそれを売っていく。 やがてダリの取り巻き、ダリの贋作者(というか、ダリの製作協力者)、ダリの隣人だちと深くかかわるうちに、ダルのおぞましい、奇行と、ダリ自身が贋作の中心にいたことが暴かれていく。 強欲、下品、下劣と言ってしまえばそれまでだが、ある意味、芸術の意味をシュールに否定しそれを超えたダリの生涯と、ダリの贋作、贋作の贋作が、多重に色なすダリの世界に、本当のシュールを感じることもできる。 原作の軽妙さを削がず、ダリのセリフも多いこの本の中で、ダリが本の中から出てくるようなリアルな、楡井さんの訳は相変わらず素晴らしい
    • (Jonatahan Harr(2005)"The Lost Painting"(田中靖訳『消えたカラヴァッジョ』、早川書房、2008年):Mixiの日記参照
    • ★★★『血とシャンペン:ロバート・キャパ-その生涯と時代』 アレックス・カーショウ、野中邦子訳、角川書店、319頁、2004年;"Blood and Champagne: the Life and Times of Robert Capa, Alex Kershaw, :死後50年の今年、キャパに関する本が多く出版された中で、出色の出来といわれている。著者はこの偉大な戦争写真家の実像に迫るため、4年の歳月をかけ、資料研究、キャパ本人を知る多くの人への地道なインタビューを行った。伝記作家は得てして対象に近くなりすぎるため、客観性がかける傾向があるといわれるが、著者はバランスを保ち明らかになった事実(もしくは事実と思われる)に基づき、淡々と写真家の生涯を描いていく。訳も含め文章は血道に練り上げ、各章のコンパクトさに象徴されている。引用も丹念に行われ、血のにじむような努力と研究の存在を際立たせている。まさしくキャパとその時代を知る珠玉の書。(2004/8/11)
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